手前アフター〜It's Nothing Life〜GS Edition(嘲)
「”希望”とは、夜中に目が覚めて行く便所である。
そこに明かりがあるから向かうのではなく、
『そうせざるおえない』ところが必然的に”光のある場所”なのだ」
「また訳の分からない事を言い出しましたこの人」
「何って?『智代アフター〜It’s a Wonderful Life〜CS Edition PSP』の話だよ」
「いえ、聞いてないですし。って、またギャルゲですか。好い加減にして下さいよ」
「まあまあ、大人でなけりゃあ分からねえ事もあるのさ。泣けて、笑えて、心揺さぶられたよ。
個人的な感想で言えば、幻想色の強いAIRやKANONよりもドラマ色の強いCLANNADの方がまだ入りやすかったけど、
今回の智代アフターが物語として一番”救いが無くて”好きだね。そもそも智代か藤林杏が好きだったからね俺は。
意見や解釈はいろいろあるだろうさ。それは各人がやってみなけりゃ分からない」
「あの、あまりに勢い熱く語り過ぎてて、わたし引いてますから」
「才色兼備、文武両道、有限実行で人望も厚く、家事も出来て、いつも一生懸命で、少し不器用で、
辛く、苦しく、悲しく、絶望しても、決して諦めずに頑張り続け、甲斐甲斐しく付き添ってくれる。
相手がどんな悲惨な状態に陥っても”いつまでも変わらぬ愛”を体現してみせる。
そりゃあ、こんないい女と添い遂げられるなら、どんな男でも幸福だろうさ」
「入れ込みすぎです。病的に。
所詮ゲームですから。体裁の良い御伽噺です」
「おまけに、『変態だ!』と恥じらながらも淫行に付き合ってくれたり、
いつもは男言葉なのに『女の子らしくないか?』と挙動を気に掛けたり、
けなげで、いじらしくて、可愛過ぎて背筋にゾクゾク来るぜ」
「わたしはあなたのあまりの哀れさに背筋が凍っています」
「然しさ、三次元の女ってのは総じてアレだろ?
イケメン・高学歴・金持ちが目に入れば瞬間的に三点倒立でヴァギナ開いて想像妊娠で七ツ子産むんだろうよ」
「どんな怪奇SFですか、馬鹿でしょう本当に」
「で、その七ツ子は一人あたり数十万で闇市場に売り捌いて日銭を稼いではブランドやスイーツやイヤシに充てて、
あるいは子供が出来たのっつって糞ブサキモ男を脅迫してATMとして搾取しながら目当ての男に貢ぐんだろうよ。
まあ俺には関係無いし。このまま修行を積んで、俺は霞食う大魔導師になるから」
「もう駄目です。ドタマがイカレてるんですこの人」
「ともかく、二次元は素敵だよ」
「自家製の理想、その具現化と信仰ですから、さぞかし素敵でしょう。
だから何の分野でも、悪質なヲタクは閉鎖的で排他的で自慰的なんです」
「一人で満足出来るなら上等じゃないか」
「何に幸福を見出すかは勝手ですけどね。他人の迷惑にならない限り」
「幸福指数なんてアテにゃなんねえんだよ。
日本だろうがアフリカアジアだろうが欧米だろうが、
六畳間だろうが摩天楼だろうが宮殿だろうが、
どんな境遇であれ、自分が居る場所から周りを見て、持っているものを自分で守るしかない。
そういう意味でも、”私は朋也がいればどこだっていい”って智代の感性は真っ直ぐで慎ましいよ」
「態々あなたに言われずとも、大概の人はそうやって生きてると思いますけどね」
「そして”身近な知り合いだから助ける”って朋也の意志も、短絡で御節介ではあるけど、
社会を互助機関として見た場合、最も確実に貢献出来る方法だからね。
身近な人間のひとりも助けられねえ人間が御高説のたまって世界救えりゃ世話無えからな」
「良い話に持っていこうとしてますけど、発端はただのギャルゲですからね」
「智代から”とも”って幼児への、依存を通り越して信仰とも言えるほどの入れ込み具合は、
未だかつて知らなかった母性が内に芽生えた事による精神の揺さ振り、それ故の不安定、
言わば覚束無い”母性のハイハイ”だろうね」
「思いっ切り独断で語ってますけど、冒頭での解釈云々の話はもう撤回ですか」
「あと、”子供が繋ぐ絆”も大きなテーマになってるけど、
日本で言えば、少子高齢化なんて実際は問題じゃねえしな。
慎ましく暮らすだけでも大変なのに、満足に子供を育てるには金が掛かる。
にも関わらず、ゴムの使い方すら知らねえ無教養者がネズミ講よろしくエイズ広めてやがって、
あるいは低収入の愚民だけがドブウサギみてえにポコポコ餓鬼作りやがる。
要は高収入のインテリが健全な結婚出産で出費しねえ、ってのが問題なんだろうよ」
「あなたの言い方は聊か非常識で非道いですけど、
まあ正直な所そういう部分も有るでしょうね。国からすれば」
「老人は若者を甘ったれの勉強不足と罵り、若者は老人を耄碌ロートルと蔑み、
男性は無欲で矮小化し、女性は貪欲に肥大化し、
民は官を嫉妬し叩き、官は民を見下し搾取し、
お上は利己保身、下々は混乱低迷、
性と暴力が支配する拝金超学歴主義、国民総足の引っ張り合い。
全ては無情の『自己責任』で済ませ保障や助け合いは無し。
相互監視と密告制度で規制された民主的全体主義。
これがお前らの愛するこの”とてつもなく美しい国”の実態だよ」
「お前らって誰ですか一体。あなただけでしょうが。
もう完全に偏向した毒電波が入ってますね。深刻な譫妄状態ですよ」
「でもさ話戻すけど、結局は登場人物たちだって、恵まれた奴らなんだよな。
確かに家庭環境は不遇だけど、スポーツや武道で才能を発揮したり、
頼り頼られる仲間が居たり、報われない努力でも見守っていてくれる人が居てさ。
けど、世の中の大多数は、名前どころかグラフィックすら無い脇役だろうさ」
「また始まりましたよ。毎回そこに行き着く」
「そうだろ。お前らは、才能も取り柄も無い、恋人も仲間も居ない、煌めく過去も明るい未来も無い、
勿論”人生の宝物”なんて無い、ひたすらBAD ENDを蓄積しているような空虚な何も無い現実だけがあって、
うんざりする位に惨めで貧しい救いの無いこの人生と如何に対峙するか?ってのが問題なんだよ、いつだって」
「だから、お前らじゃなくて、あなただけですから」
「智代アフターは、正に智代による生の不条理という問いへの回答だよ。
あと、終始いろいろ伏線も張られているんだけど、ネタバレになるから詳しくは言わないヨ☆」
「配慮しなくたって誰もあなたなんか相手にしてませんから」
「幸せな時期は泡沫のように去り、不条理な困難や面倒に見舞われて、それでも尚
『世界は美しく、そして、人生はかくも素晴らしい。』と言い切る事の出来た智代の強さがこの物語の根幹である。
それは朋也と智代が、沢山の迷いや挫折や苦悩を、自らと周囲の助けで乗り越えていったからこそ出来た成長であり、
与えられた物ではなく、自らの意志と努力で選び取っていったものである。
素直にそのメッセージを受け取るとすれば、ハッピーエンドであってもバッドエンドであっても、
全体を通しての声を枯らす程に切実な人間賛歌が聞こえるであろう」
「何故か口調も変わってますし、無駄に前向きで仰々しくて、本当に気持ち悪いです」
「でも、いくらゲームで気持ちが晴れたからって、何も変わりゃしねえんだよ。
現実、努力なんて報われないし、成長も出来ない、駄目な奴は何をやっても駄目。
運や境遇に恵まれた人間だけが得し、そうでない人間は地を這うだけの世の中だよ。
だからって、投げやりになる必要は無くて、まして死ぬ必要だって無いんだよ。
美しくも素晴らしくもない、暗く小汚く退屈で感情の死んだような世界でも、
俺らは平気で生きられるんだから。それこそ、”私は私がいればどこだっていい”と言えば良い」
「その結果が、ただの自己愛肥大症のあなたみたいなゴミクズじゃないですか」
「どれだけ真面目に品行方正に生きてたって、自暴自棄の通り魔に刺されたらイチコロだからね。
逆に、どれだけ不真面目に粗暴で怠惰に生きたって、楽々に大往生する人だって居る。
どんな経路を辿るかは分からない。それでも、出来る限り善いと思える方向へ意志を作用させていく。
お前らには智代や河南子は居ない。誰にも好かれないし、愛されないし、認められない。
でも、肥溜めや痰壷の中から、蛆虫なりの幸福を見つけて、現在を肯定していけりゃいんだよ。
それがいつ終わるとも知れない不条理な生を満喫する為の、ほとんど唯一の方法だと思うよ。
愉しみが単なるギャルゲでもな」
「だから、お前らって、もういいです・・・。矛盾してますし、感傷的過ぎてついて行けません。
とどの詰まり、あなたはそういう風に、刹那的な自己肯定のみみっちい生き方を選ぶというだけの話ですよね」
「そんなつまんねえ話は置いといてさ。
俺の敬愛する掘骨砕三先生の漫画がどこ行っても在庫無いってどういう事だこら!」
「支離滅裂でどうしようもないですね」
「いや、だからそこは『もう、仕方の無い奴だな・・』と困ったように嬉しい顔で優しく叱ってくれ」
「気違い」
「や、『変態っ!』って言いながら頬を紅く染めてそっぽを向いてくれ」
「もういいです」
「ともかく、これからゲームなんてやる暇も気力も無くなるだろうから。
最後のゲームがこれで良かったよ。感動をありがとう、智代」
「最後までそれですか。本当に空しい人生ですね」
It's Nothing Life!(嘲)